50代からの「書く習慣」〜心と体の変化を記録して健康寿命を延ばすヒント〜
日常の小さな「書く」が、心と体に寄り添う時間になる
50代を迎え、日々の暮らしの中でご自身の心や体の変化に気づく機会が増えた方もいらっしゃるかもしれません。漠然とした不安を感じたり、以前とは違う体調の変化に戸惑ったりすることもあるかと存じます。そんな時、特別なことを始める前に、まずは身近な「書く」という行為に目を向けてみませんか。
「日記なんて子供の頃だけ」「書くのは苦手」と思われるかもしれません。しかし、ここでご紹介する「書く習慣」は、いわゆる日記のような堅苦しいものではなく、ご自身の心や体の声に耳を傾け、それを書き留めていく、とてもシンプルな習慣です。この小さな一歩が、巡り巡って心の安定につながり、さらには体の健康寿命を延ばすヒントになる可能性があると言われています。
「書く習慣」が心に与える穏やかな変化
書くという行為には、ご自身の内面を整理し、客観的に見つめる効果があると考えられています。
- 感情の整理: 心の中でぐるぐる考えていること、モヤモヤとした気持ちなどを書き出すことで、頭の中が整理され、感情が落ち着くことがあります。「なんとなく不安」と感じていた原因が、書き出すことで明確になり、対策を考えやすくなることも。
- ストレスの軽減: ストレスを感じた出来事やその時の感情を書き出すことで、心の中に溜め込まずに済み、カタルシス効果(浄化作用)が得られる場合があります。これは、科学的な研究でも示唆されていることです。
- 自己理解の深化: 日々の出来事や感じたことを記録することで、ご自身の思考パターンや感情の癖に気づきやすくなります。「どんな時に嬉しく感じるか」「どんな時にイライラしやすいか」などを知ることは、自分自身をより深く理解することにつながります。
- ポジティブな側面に目を向ける: 感謝したこと、嬉しかったこと、うまくいったことなどを書き出す習慣は、自然と物事の良い面に目を向けるトレーニングになります。これは心の健康にとって非常に大切なことです。
「書く習慣」が体にもたらす気づき
心と体は密接につながっています。心が安定すると、体調も整いやすくなることはよく知られています。さらに、体を意識して書く習慣を持つことには、以下のようなメリットも期待できます。
- 体調の変化の可視化: 「いつから〇〇の症状が出ているか」「どんな時に体調が良い(悪い)か」といった体の変化を記録することで、ご自身の体のリズムや不調のパターンに気づきやすくなります。これは、医療機関を受診する際に、正確な情報を伝える上でも役立つことがあります。
- 生活習慣との関連性の発見: 食事の内容、睡眠時間、運動の有無、天気、気分などと一緒に体調を記録すると、それぞれの関連性が見えてくることがあります。「この食事をとった後は胃もたれしやすい」「よく眠れた日は体が軽い」といった発見が、より良い生活習慣を送るためのヒントになります。
- 不調に対する冷静な対応: 症状が出た時に記録を見返すことで、「前回も同じようなことがあったけれど、数日で改善したな」などと冷静に判断できるようになり、過度な心配を減らすことにつながるかもしれません。
今すぐ始められる「書く習慣」のヒント
難しく考える必要はありません。まずは、ご自身にとって無理なく続けられる方法から始めてみましょう。
- 形式にこだわらない: おしゃれなノートや高価なペンは不要です。普段使っている手帳の片隅にメモしたり、不要になったノートの切れ端を使ったり、スマートフォンのメモ機能を使ったりするのも良いでしょう。
- 「一行」から始めてみる: 「今日のよかったこと1つ」「今朝の体調」「今日の食事で美味しかったもの」など、書きたいことを一つだけ決めて一行だけ書くことから始めてみてください。
- 時間を決めない: 「寝る前に」「朝起きたら」など、時間を決めすぎると負担になることもあります。気が向いた時に、数分だけ時間を見つけて書くようにします。
- 体調の変化を記録する: 「〇月〇日、〇〇の調子が少し気になる」など、ご自身の体に関する気づきをメモする習慣をつけるのもおすすめです。
小さな一歩が、未来の健康を育む
「書く習慣」は、即効性のある特効薬ではありません。しかし、日々の中にこのような「自分のための時間」を持つことは、忙しい毎日の中で見落としがちなご自身の心や体の声に気づくための大切な機会となります。
書き留めた記録を見返すと、過去のご自身の頑張りや変化に気づき、自己肯定感につながることもあります。また、体調の記録は、ご自身の体をより深く理解し、今後の健康管理に役立てるための貴重なデータとなります。
50代からの「書く習慣」は、ご自身のペースで、気負うことなく続けられるセルフケアです。この穏やかな習慣が、あなたの心と体に寄り添い、健やかな未来へとつながる一助となれば幸いです。