ぐっすり眠って心も体も元気に〜50代からの睡眠を見直すヒント〜
50代からの睡眠の変化と心身の健康
年齢を重ねるとともに、「寝つきが悪くなった」「夜中に何度も目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」「長時間寝ても疲れが取れない」など、睡眠に関するお悩みが増えてくる方が少なくありません。特に50代を迎える頃からは、心身の変化に伴って睡眠の質が変わりやすい時期でもあります。
こうした睡眠の質の低下は、単に「眠れない」というつらい状態にとどまらず、私たちの心の健康や体の健康にも様々な影響を及ぼすことが知られています。イライラしやすくなったり、日中の集中力が続かなくなったりするほか、長期的に見ると、生活習慣病のリスクを高めたり、免疫機能に関わったりすることも研究で示唆されています。
ココロカラダ健康ガイドでは、「心の健康が体の健康寿命を延ばす」という考え方を大切にしています。質の良い睡眠は、まさに心と体の両方を健やかに保つための土台となるものです。今回は、50代からの睡眠に焦点を当て、その変化の理由や、心身の健康を支えるための質の良い眠りを手に入れるための具体的なヒントをご紹介します。
なぜ年齢とともに睡眠は変わるのでしょうか?
年齢とともに睡眠が変化する背景には、いくつかの理由があります。
まず、体内のリズムを司る「体内時計」の機能が、加齢によって少しずつ変化することが挙げられます。若い頃に比べて体内時計の周期が早まる傾向があり、それが朝早く目が覚めてしまうことなどにつながることがあります。
また、深い眠りである「ノンレム睡眠」のうち、特に脳や体を休める重要な段階である「徐波睡眠(じょはすいみん)」と呼ばれる睡眠が減少することも知られています。これにより、睡眠時間は確保できていても、「眠りが浅い」「疲れが取れない」と感じやすくなることがあります。
さらに、女性の場合は更年期に伴うホルモンバランスの変化(エストロゲンの減少など)が、ほてりや発汗といった不快な症状を引き起こし、それが夜間の覚醒を増やしたり、寝つきを悪くしたりすることがあります。
質の悪い睡眠が心と体に与える影響
質の悪い睡眠が続くと、私たちの心と体に様々な不調が現れる可能性があります。
- 心の健康への影響:
- イライラ、不安感の増加
- 気分の落ち込み
- 集中力や意欲の低下
- ちょっとしたことでくよくよ悩んでしまう
- 体の健康への影響:
- 日中の疲労感、だるさ
- 頭痛や肩こり
- 免疫機能の低下(風邪をひきやすくなるなど)
- 高血圧や糖尿病などの生活習慣病リスクの上昇(長期的な影響として)
- 食欲や代謝に関わるホルモンのバランスの乱れ
このように、睡眠は単に体を休めるだけでなく、脳や心の状態、さらには全身の機能に深く関わっていることがお分かりいただけると思います。
質の良い眠りのための具体的なヒント
では、心身の健康を支えるための質の良い眠りを手に入れるためには、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。ここでは、日常生活で無理なく取り入れられる具体的なヒントをいくつかご紹介します。
1. 規則正しい生活リズムを整える
毎日、できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。休日も平日との差を1〜2時間以内にするのが理想的です。体内時計が整い、夜になったら自然と眠りに入りやすくなります。朝、起きたらすぐに日光を浴びることも、体内時計をリセットするために効果的です。
2. 寝る前のリラックス習慣を取り入れる
寝る前に心身をリラックスさせる時間を作りましょう。
- ぬるめのお風呂: 就寝1〜2時間前に、38〜40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体の深部体温が一度上がり、その後下がる過程で眠気を誘います。
- 軽いストレッチやヨガ: 体の緊張をほぐし、リラックス効果が得られます。激しい運動は避けましょう。
- アロマセラピー: ラベンダーやカモミールなどのリラックス効果のあるアロマを焚いたり、お風呂に入れたりするのも良いでしょう。
- 温かい飲み物: ホットミルクやカフェインの入っていないハーブティー(カモミールなど)は体を温め、心を落ち着かせてくれます。ただし、飲みすぎると夜間覚醒の原因になるため少量に留めましょう。
3. 寝室環境を快適にする
眠りやすい環境を整えることも大切です。
- 温度と湿度: 寝室の温度は一般的に18〜22℃程度、湿度は50〜60%程度が良いとされています。ご自身にとって快適な温度・湿度を見つけましょう。
- 光: 寝る前は部屋の照明を暗めにし、スマートフォンやパソコンのブルーライトは避けましょう。寝室は光が入らないように遮光カーテンなどを利用するのも効果的です。
- 音: 騒音は眠りを妨げます。必要であれば耳栓を利用したり、静かな音楽を流したりするのも一つの方法です。
4. 食事や飲み物に注意する
- カフェイン: コーヒー、紅茶、緑茶、栄養ドリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があります。夕方以降は摂取を控えるのが賢明です。
- アルコール: 寝つきは良くなるように感じても、睡眠途中で覚醒を増やし、眠りの質を低下させます。寝る前の飲酒は控えましょう。
- 寝る前の食事: 就寝直前の食事は胃腸に負担をかけ、眠りを妨げることがあります。寝る3時間前までに済ませるのが理想です。
5. 日中の過ごし方も大切
日中の過ごし方も夜の眠りに影響します。
- 適度な運動: 日中に体を動かすことは、夜の眠りを深くするのに役立ちます。ウォーキングや軽い体操など、無理なく続けられる運動を日常的に取り入れましょう。ただし、就寝直前の激しい運動は避けましょう。
- 日光浴: 午前中にしっかりと日光を浴びることは、体内時計を整え、夜に自然な眠気を促す効果があります。
「眠れない」と悩みすぎないことも大切
これらのヒントを実践しても、どうしても眠れない夜もあるかもしれません。そんな時は、「眠らなければ」と焦ったり、悩みすぎたりしないことも大切です。かえって目が冴えてしまうことがあります。
どうしても眠れない場合は、一度寝床から出て、静かな場所でリラックスできること(読書や音楽鑑賞など)をして、眠気を感じたら再び寝床に戻るのも一つの方法です。
さいごに
50代からの睡眠の変化は自然なことでもあります。完璧を目指すのではなく、まずは一つか二つ、ご自身にとって取り組みやすそうなことから試してみてはいかがでしょうか。
質の良い睡眠は、日中の活動に必要な活力を与えてくれるだけでなく、心の安定にも繋がります。そして、心と体がともに健やかであることは、健康寿命を延ばすための大切な要素です。
ご自身の心と体の声に耳を傾けながら、今日からできる小さな一歩を踏み出してみましょう。もし、様々な方法を試しても不眠が続く場合や、日中の眠気が強く日常生活に支障が出ている場合は、一人で悩まずに医療機関や専門家にご相談することも考えてみてください。