心と体が喜ぶ「香り時間」〜50代からの健康寿命を育むヒント〜
暮らしに「香り」を取り入れて、心も体も健やかに
50代を迎え、心身にさまざまな変化を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。以前は気にならなかった些細な不調や、漠然とした不安感など、「なんとなく調子が悪い」と感じることが増える時期かもしれません。
このような心や体の変化と向き合う中で、私たちはつい食事や運動といった「体へのアプローチ」に意識が向きがちです。もちろんこれらも大切ですが、「ココロカラダ健康ガイド」でお伝えしているように、心の健康は体の健康寿命を延ばす上で非常に重要な要素です。
今回は、日々の暮らしの中で無理なく取り入れられる「香り」の力を借りて、心と体の両面から健やかさを育む方法をご紹介します。私たちの嗅覚は、五感の中でも特に心や感情と密接に結びついています。香りを意識的に取り入れることで、心身のリフレッシュやリラックスにつながり、健やかな日々を送るための一助となることが期待できます。
なぜ「香り」が心と体に良い影響を与えるのか
香りが私たちの心や体に影響を与えるのは、嗅覚が脳の中でも感情や記憶をつかさどる部分(大脳辺縁系)に直接的に信号を送るという特徴があるからです。他の感覚(視覚、聴覚など)は一度、別の脳の領域を経由してから伝わりますが、嗅覚はよりダイレクトに心へ働きかけます。
これにより、特定の香りを嗅ぐことで気分が落ち着いたり、心が安らいだり、あるいは活力が湧いてきたりといった変化が起こります。
また、香りの刺激は自律神経にも影響を与えることが知られています。例えば、心地よいと感じる香りは副交感神経を優位にし、心拍数を落ち着かせたり、体の緊張を和らげたりする効果が期待できます。逆に、特定の香りは交感神経を刺激し、集中力を高めることにもつながります。
このように、香りは単に良い香りがするということだけでなく、私たちの自律神経のバランスを整え、心の状態を変化させることで、間接的に体の健康にも良い影響をもたらすと考えられているのです。ストレスの緩和やリラックス効果は、肩こりや頭痛といった体の不調の軽減にもつながることがあります。
日常で楽しめる「香り」の種類と選び方
「香り」と聞くと、アロマテラピー専用のオイルをイメージされるかもしれません。もちろんそれも素晴らしいですが、私たちの身の回りにはもっと手軽に楽しめる香りがたくさんあります。
- アロマテラピー用エッセンシャルオイル: 植物から抽出された天然の香りは、種類によってさまざまな効果が期待できます。ラベンダーはリラックス、オレンジやベルガモットはリフレッシュ、ペパーミントは集中力アップなど。少量でも香りが強く、専用のアロマディフューザーやアロマストーンを使うほか、ティッシュに1滴垂らすだけでも楽しめます。
- ハーブティー: ハーブ自体が持つ香りを楽しむことができます。カモミールは心を落ち着かせ、ペパーミントは気分をスッキリさせます。飲むだけでなく、湯気と一緒に立ち上る香りも楽しんでみてください。
- お茶やコーヒー: 淹れたてのお茶やコーヒーの香りも、心地よいリラックスや覚醒効果をもたらします。
- 季節の植物や花: 庭の花、頂き物の花束、季節の果物(柚子やミカンなど)なども自然な香りを放ちます。
- 料理やお菓子作り: 香りの良いスパイス(シナモン、ジンジャーなど)やハーブを使うことで、食を楽しみながら香りも満喫できます。
香りを選ぶ際は、「自分が心地よいと感じるか」を最優先することが大切です。流行や他人の評価ではなく、ご自身の鼻と心でピンとくる香りを選んでみてください。最初は好きな香りから試してみるのが良いでしょう。
毎日の暮らしに取り入れる「香り時間」のヒント
特別な準備は必要ありません。いつもの毎日に、意識的に「香り」をプラスする時間を作ってみましょう。
- 目覚めの香り: 朝起きてすぐに、柑橘系(オレンジ、グレープフルーツなど)やミント系の香りを少し嗅いでみてください。シュッとスプレーしたり、ティッシュに垂らしたものを枕元に置いたり。意識がシャキッとし、清々しい一日の始まりにつながります。
- 家事の合間にリフレッシュ: 掃除や洗濯の合間に、好きな香りを軽く嗅いでみましょう。ティッシュにアロマオイルを1滴垂らしてお皿に乗せておく、ハーブティーを淹れて一息つくなど。中断した家事に戻る際の気持ちの切り替えになります。
- 休憩タイムのお供に: 読書やお茶の時間に、アロマディフューザーを使う、香りの良いキャンドルを灯す(火の元には十分注意してください)、好きな香りのハンドクリームを塗るなど。五感を使ってリラックスすることで、心の安らぎが深まります。
- バスタイムを贅沢に: バスタブにアロマオイルを数滴垂らす(乳化剤を使うと安全です)、香りの良いバスソルトを入れる、ハーブを布袋に入れて浮かべるなど。温かい蒸気と一緒に香りを吸い込むことで、体の疲れとともに心のわだかまりも解けていくのを感じられるかもしれません。
- 眠りの前のリラックス: ラベンダーやカモミールなどの穏やかな香りを寝室に取り入れてみてください。枕元にアロマストーンを置く、寝具に軽くスプレーするなど。心身がリラックスし、質の良い睡眠へつながるお手伝いをしてくれます。
- 散歩や庭仕事で自然の香りを楽しむ: 意識して植物の香り、土の香り、雨上がりの空気の香りなどを感じてみましょう。自然の中には心を癒やす香りがたくさんあります。
「香り時間」を作ることで、忙しい毎日の中に意識的なリラックスの瞬間を生み出すことができます。これは、ストレスが溜まりがちな心にとって大切な休息となり、結果的に体の健康維持にもつながります。
小さな一歩から、自分に合った香りを見つけて
香りの感じ方や好みは人それぞれです。無理に特定の香りを使う必要はありません。まずはご自身が「これ、いいな」と感じる身近な香りから試してみてください。お茶やコーヒーの香りをいつもより意識して深く吸い込んでみる、お風呂上がりに香りの良いボディクリームを使ってみるなど、小さなことから始めてみましょう。
アロマオイルを使う場合は、品質の良いものを選ぶこと、肌に直接つけないこと、換気をすることなどの基本的な注意点があります。体質に合わない場合や、妊娠中、持病がある場合は専門家や医師に相談することをおすすめします。
「香り時間」は、ご自身を大切にするための優しい習慣です。心と体が喜ぶ香りを見つけて、毎日の暮らしをより豊かに、そして健やかな健康寿命を育むための一歩として取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
50代からの心と体の健康は、日々の小さな習慣の積み重ねから育まれます。香りを意識した「香り時間」は、忙しい中でも手軽にできるセルフケアの一つです。心地よい香りは、私たちの心に安らぎを与え、体の緊張を和らげ、日々の活力を高める手助けをしてくれます。
今日から、お気に入りの香りを一つ見つけて、心と体が喜ぶひとときを過ごしてみてください。その積み重ねが、健やかな健康寿命へとつながることを願っております。