朝の光、夜の光… 50代からの心と体に効く「光習慣」で健康寿命を延ばすヒント
50代からの心と体、光との意外な関係
50代半ばを迎え、以前よりも疲れやすくなった、夜中に目が覚めるようになった、なんだか気分がすぐれない日が増えたと感じることはありませんか。更年期や加齢に伴う体の変化に加え、目まぐるしい情報に囲まれた日常は、私たちの心と体に負担をかけやすいものです。
こうした心身の不調は、さまざまな要因が絡み合って起こりますが、実は私たちの身近にある「光」とのつきあい方も、その一つとして近年注目されています。「光」は、ただ物を見るためのものではなく、私たちの体や心の調子を整えるために、非常に重要な役割を果たしていることが分かっています。
この記事では、50代からの心と体の健康寿命を延ばすために、光がどのように影響しているのか、そして日常生活で無理なく取り入れられる「光習慣」についてご紹介します。
心と体にとっての光の役割
私たちの体には、「体内時計」と呼ばれる約24時間周期のリズムが備わっています。これは、睡眠と覚醒、ホルモン分泌、体温や血圧の変動など、生命維持に必要な様々な機能をコントロールしています。この体内時計を正確に調整するために、最も強い信号となるのが「光」です。特に、朝の光は体内時計をリセットし、一日の始まりを体に知らせる重要な役割を担っています。
また、光は私たちの気分にも影響を与えます。日光を浴びることで、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌が促されることが知られています。セロトニンは精神的な安定に関わり、不足すると気分の落ち込みや不安につながりやすいと考えられています。
しかし、現代社会では、夜遅くまで明るい照明の下で過ごしたり、スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトを浴び続けたりすることが増えています。このような不適切な光環境は、体内時計を乱し、心身の不調を引き起こす原因となる可能性があります。睡眠の質の低下、疲労感、集中力の低下、気分の変動などが、その一例です。
50代が意識したい「光の種類」とその影響
光と一口に言っても、その種類や強さ、色によって体への影響は異なります。
- 太陽光: 自然の光であり、体内時計をリセットするのに最も効果的です。特に、朝の太陽光は、日中の活動モードへの切り替えを促し、夜には自然な眠りを誘うためのメラトニンの分泌を調整する上で重要です。また、肌が日光に当たることで、骨の健康維持に欠かせないビタミンDが体内で生成されます。
- 屋内の照明: 照明の色(色温度)や明るさ(照度)は、気分や集中力、リラックス度合いに影響します。例えば、日中の活動時には明るく白い光(昼白色や昼光色)が適していますが、夜やリラックスしたい時には、暖かみのある暗めの光(電球色)が体内時計を乱しにくいとされています。
- ブルーライト: スマートフォン、パソコン、テレビなどの画面から多く発せられる光です。特に夜間にブルーライトを長時間浴びると、脳が昼間だと錯覚し、睡眠を促すメラトニンの分泌が抑制され、寝つきが悪くなるなど睡眠の質に影響を与えることが知られています。
心と体にやさしい「光習慣」を始めるヒント
日々の生活の中で、光とのつきあい方を少し見直すことで、心と体の調子を整えることにつながります。無理なく始められる具体的な「光習慣」をご紹介します。
- 朝、起きたらまずカーテンを開ける: 目が覚めたら、まずは窓辺に行き、カーテンを開けて太陽光を浴びましょう。顔を洗ったり、朝食の準備をしたりしながらでも構いません。ほんの数分でも、朝の光を浴びることで体内時計がリセットされ、一日を活動的に過ごす準備が整います。雨の日や曇りの日でも、屋外の光は室内の照明より体内時計への影響が大きいとされています。
- 日中は適度に屋外に出たり、窓辺で過ごしたりする: 可能な範囲で、日中の明るい時間帯に外を散歩したり、庭の手入れをしたりする時間を持ちましょう。難しい場合は、部屋の中でも窓の近くで過ごしたり、ベランダに出たりするだけでも効果があります。自然の光を浴びることは、心身のリフレッシュにもつながります。
- 夜は照明の明るさを落とし、暖かみのある光にする: 夕食後や就寝前の時間は、部屋の照明を少し暗くし、暖かみのある電球色に切り替えましょう。強い光や青白い光は、体を覚醒させてしまいます。間接照明などを活用して、落ち着いた雰囲気を作ることもおすすめです。
- 寝る前のブルーライトを控える: 就寝1〜2時間前からは、スマートフォンやタブレット、パソコンの使用をできるだけ避けましょう。画面を見たい場合は、ブルーライトカット機能を利用したり、メガネをかけたりするのも良い方法です。寝室にはテレビやデジタル機器を持ち込まないことも、質の良い睡眠のために有効です。
- 寝室はできるだけ暗くする: 眠っている間に光を感じると、脳が覚醒しやすくなり、睡眠の質が低下することがあります。寝室は遮光カーテンを使うなどして、できるだけ暗く保つようにしましょう。豆球や常夜灯も、眠りを妨げる可能性があるため、消して寝るのが理想です。
小さな一歩が心と体の健康寿命につながる
「光習慣」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずは「朝起きたら一番にカーテンを開ける」という一つのことから始めてみるのはいかがでしょうか。あるいは、「寝る前にスマホを触るのをやめて、好きな香りのハンドクリームを塗る時間にする」など、無理なく続けられそうな小さな変化から取り入れてみてください。
私たちの体は、何十年もかけて自然のリズムに合わせて進化してきました。光との健全な関係を取り戻すことは、乱れがちな体内時計を整え、心身のバランスを取り戻すための一歩となります。それは、日々の活力を高め、穏やかな気持ちで過ごすためにも役立ち、結果として健やかな体の状態を長く保つ、つまり健康寿命を延ばすことにも繋がっていくでしょう。
情報過多の現代だからこそ、時には立ち止まり、私たちの体に本来備わっているリズムに耳を澄ませてみることが大切です。光との上手なつきあい方を知り、日常生活に小さな「光習慣」を取り入れて、心と体の両面から健康で豊かな日々を育んでいきましょう。